前回の続きです。
印刷インキはVOCの排出削減が大きな課題となっていることを書きました。
VOCとは、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds)の略で、蒸発しやすく大気中で気体となる有機化合物の総称です。しかし、実際にどういった物質をVOCとしているかの定義は様々です。
大気汚染防止法では、「大気中に排出され、又は飛散した時に気体である有機化合物」としています。
印刷業界(日本印刷産業連合会)のグリーンプリンティング認定制度では、「石油系由来のVOC含有量1%未満(重量比)のインキ」をノンVOCインキと定義しています。
エコマークの印刷インキの認定基準では、「沸点が260度までの有機化合物」とし、それ以上の沸点のものを除外しています。
大雑把に言うと、エコマーク認定、グリーンプリンティング認定、大気汚染防止法の
順に範囲が広くなっています。
定義の違いによってこんな困ったことも起こっています。エコマークインキのラベルには「石油系溶剤30%以下 VOC成分1%未満」等と表示されているものがあります。VOCが1%未満ならいわゆるノンVOCインキのようですが、石油系が30%では、印刷業界のいうノンVOCインキとは程遠いものです。
印刷物発注者は、先進的な環境配慮を考えてノンVOCインキを指定したのに、印刷会社では(石油系溶剤の含まれる)エコマークインキを使用する、といったこともありうるかもしれません。
エコマークインキの認定基準は2002年に制定されたもので、そろそろ現状に合わなくなってきているのではないでしょうか。認定基準の改定が望まれます。
2007年11月19日
2007年11月09日
ノンVOCインキ
前回の続きです。
ノンVOCインキとは、印刷インキのVOC成分を全て植物油や植物由来溶剤に置き換えたものです。
VOCフリーインキ、ベジタブルインキなど、メーカーによって呼び方は様々です。
乾燥時間がかかるなどの問題がありましたが、徐々に改良されており、環境報告書など、環境配慮に関心の高い印刷物で使用されています。
※エコ印刷研究会の調査では、環境報告書・CSRレポートでは26%、IRレポートでは12%のシェアとなっています。
先進的な環境配慮型インキであるノンVOCインキですが、いくつか問題があります。
最も大きな問題は、環境性能がはっきりしないという点です。
先ほどインキメーカーによって、色々な呼び方があると書きましたが、インキ業界では、統一した基準がなく、何をVOCとしているのか、VOCを全く含んでいないのか、1%未満なのか、よくわかりません。(特にVOCの定義については問題が大きいです。これはまた次回に)
2つめは、環境アピール効果です。
環境配慮マークでのアピールには、そのマークの普及度・知名度が重要です。同じようなマークがたくさんあっては、環境コミュニケーションのツールとしては適切とはいえません。
※エコ印刷研究会では、ノンVOCインキに分類されるマークを13種類確認しています。
先進的な環境配慮型のインキですが、一般の印刷物への広がりはまだまだです。
インキ業界にはぜひともマークの統一など普及促進に取り組んで欲しいものです。
ノンVOCインキとは、印刷インキのVOC成分を全て植物油や植物由来溶剤に置き換えたものです。
VOCフリーインキ、ベジタブルインキなど、メーカーによって呼び方は様々です。
乾燥時間がかかるなどの問題がありましたが、徐々に改良されており、環境報告書など、環境配慮に関心の高い印刷物で使用されています。
※エコ印刷研究会の調査では、環境報告書・CSRレポートでは26%、IRレポートでは12%のシェアとなっています。
先進的な環境配慮型インキであるノンVOCインキですが、いくつか問題があります。
最も大きな問題は、環境性能がはっきりしないという点です。
先ほどインキメーカーによって、色々な呼び方があると書きましたが、インキ業界では、統一した基準がなく、何をVOCとしているのか、VOCを全く含んでいないのか、1%未満なのか、よくわかりません。(特にVOCの定義については問題が大きいです。これはまた次回に)
2つめは、環境アピール効果です。
環境配慮マークでのアピールには、そのマークの普及度・知名度が重要です。同じようなマークがたくさんあっては、環境コミュニケーションのツールとしては適切とはいえません。
※エコ印刷研究会では、ノンVOCインキに分類されるマークを13種類確認しています。
先進的な環境配慮型のインキですが、一般の印刷物への広がりはまだまだです。
インキ業界にはぜひともマークの統一など普及促進に取り組んで欲しいものです。
2007年11月06日
印刷インキとVOC
エコ印刷研究会では、「森林問題」「VOC問題」「ゴミ問題」を印刷の3大環境負荷としています。
その中の1つVOCとは、Volatile Organic Compounds(揮発性有機化合物)の略で、蒸発しやすく大気中で気体となる有機化合物の総称です。光化学オキシダントやSPM(浮遊粒子状物質)の原因物質、つまり大気汚染の要因となるものです。
環境問題というとCO2に注目が集まりますが、VOCは健康や生活に直結する大きな問題で、大気汚染防止法での排出規制などが進められています。
印刷関連は、全VOC排出量の13%を占め、塗装に次ぐ発生源となっています。
印刷工程、機器の洗浄など様々なところでVOCが発生しますが、ここでは発注者の立場で配慮がしやすい、印刷インキのVOC対策を考えてみます。
さて、インキのVOC対策とは、印刷発注の際に、大豆油インキ、ノンVOCインキなど、VOC配慮型インキを指定する、以上です。
…これで終われば簡単なのですが、少々ややこしい問題があります。
大豆油インキは、石油系溶剤の一部を大豆油に置き換えたインキで、最近ではソイシールと呼ばれる、大豆油インキを使った印刷物であることを示すマークも普及しています。
一部というのがミソで、オフセット枚葉印刷という方式では、全重量の20%以上が大豆油であれば大豆油インキとして認定されます。インキの約半分は溶剤(油分)ですので、まだ20〜30%程度、石油系の溶剤が使われています。
大豆油インキというと大豆油だけのような印象ですが、石油系溶剤も使われていて、VOCも排出します。
そこで、ノンVOCインキというものが登場しました。VOCを全て植物油などに置き換えたものです。
詳しくはまだ次回…。
その中の1つVOCとは、Volatile Organic Compounds(揮発性有機化合物)の略で、蒸発しやすく大気中で気体となる有機化合物の総称です。光化学オキシダントやSPM(浮遊粒子状物質)の原因物質、つまり大気汚染の要因となるものです。
環境問題というとCO2に注目が集まりますが、VOCは健康や生活に直結する大きな問題で、大気汚染防止法での排出規制などが進められています。
印刷関連は、全VOC排出量の13%を占め、塗装に次ぐ発生源となっています。
印刷工程、機器の洗浄など様々なところでVOCが発生しますが、ここでは発注者の立場で配慮がしやすい、印刷インキのVOC対策を考えてみます。
さて、インキのVOC対策とは、印刷発注の際に、大豆油インキ、ノンVOCインキなど、VOC配慮型インキを指定する、以上です。
…これで終われば簡単なのですが、少々ややこしい問題があります。
大豆油インキは、石油系溶剤の一部を大豆油に置き換えたインキで、最近ではソイシールと呼ばれる、大豆油インキを使った印刷物であることを示すマークも普及しています。
一部というのがミソで、オフセット枚葉印刷という方式では、全重量の20%以上が大豆油であれば大豆油インキとして認定されます。インキの約半分は溶剤(油分)ですので、まだ20〜30%程度、石油系の溶剤が使われています。
大豆油インキというと大豆油だけのような印象ですが、石油系溶剤も使われていて、VOCも排出します。
そこで、ノンVOCインキというものが登場しました。VOCを全て植物油などに置き換えたものです。
詳しくはまだ次回…。
2007年07月24日
大豆油インキの今後
以前、大豆油インキマークが使えなくなる見込みであるとお伝えしましたが、先日、アメリカ大豆協会では、多くの継続要望があったことから、商標権存続期間を延長し、引き続きソイシールの使用許諾を行うと発表しました。これによって2011年以降も大豆油インキマークが使用できる見込みです。
ただし、単純に喜ぶべきニュースであるか、少し考えてみる必要があるでしょう。
ソイシールの停止は、大豆油が広く普及し、当初の目的を達成したことがその理由の1つでした。実際に、オフセット印刷用インキの実に67%が大豆油インキとなっています。
7割と高く普及・一般化したものを環境アピールとしてプッシュすることが果たして適切なのかどうか、改めて考える必要があるといえます。
さらに、環境面をよくみてみると、大豆油を使うことが直接環境メリットになるわけではありません。石油系溶剤を大豆油などの植物油に置き換えることが、石油系VOCを削減し、印刷の環境負荷を下げることにつながります。
大豆油インキは一定以上の大豆油を含んだインキですが、石油系溶剤も使われています(オフセット枚葉インキでは20〜30%程)。現在では、石油系溶剤を1%未満にした「ノンVOCインキ」と呼ばれるインキが開発され、利用が広がりつつあります。
例えば、エコ印刷研究会の調査では、環境報告書・CSRレポートのノンVOCインキ採用率は26%となっています。
つまり、環境面、VOCの削減効果をみると、環境配慮型インキのトップランナーは、大豆油インキからノンVOCインキにバトンタッチされようとしている状況といえます。
※大豆油インキであり、ノンVOCインキでもあるインキ(規定以上の大豆油を含み、また石油系VOC成分を1%未満にしたインキ)も存在します。
大豆油インキとそのマーク(ソイシール)は、インキの環境配慮について考えるきっかけとなったもので、功績は非常に大きいことは間違いありませんが、今後は大豆油インキ以降の印刷インキの環境配慮とそのアピールを考えるべき時期にきているといえます。
今回のソイシール停止はそうしたチャンスでしたが、継続が決まったことで低VOC化を目指す流れが後退しなければと願う次第です。
一方で、残念ながら、ノンVOCインキについては、定義・名称・マークなどインキメーカーなどによってバラバラで分かりにくく、使いにくいなど、大豆油インキの受け皿となるには不十分なのも間違いありません。こうした点については改めて考えたいと思います。
□ アメリカ大豆協会は今後も引き続きソイシール商標の使用許諾を行います
ただし、単純に喜ぶべきニュースであるか、少し考えてみる必要があるでしょう。
ソイシールの停止は、大豆油が広く普及し、当初の目的を達成したことがその理由の1つでした。実際に、オフセット印刷用インキの実に67%が大豆油インキとなっています。
7割と高く普及・一般化したものを環境アピールとしてプッシュすることが果たして適切なのかどうか、改めて考える必要があるといえます。
さらに、環境面をよくみてみると、大豆油を使うことが直接環境メリットになるわけではありません。石油系溶剤を大豆油などの植物油に置き換えることが、石油系VOCを削減し、印刷の環境負荷を下げることにつながります。
大豆油インキは一定以上の大豆油を含んだインキですが、石油系溶剤も使われています(オフセット枚葉インキでは20〜30%程)。現在では、石油系溶剤を1%未満にした「ノンVOCインキ」と呼ばれるインキが開発され、利用が広がりつつあります。
例えば、エコ印刷研究会の調査では、環境報告書・CSRレポートのノンVOCインキ採用率は26%となっています。
つまり、環境面、VOCの削減効果をみると、環境配慮型インキのトップランナーは、大豆油インキからノンVOCインキにバトンタッチされようとしている状況といえます。
※大豆油インキであり、ノンVOCインキでもあるインキ(規定以上の大豆油を含み、また石油系VOC成分を1%未満にしたインキ)も存在します。
大豆油インキとそのマーク(ソイシール)は、インキの環境配慮について考えるきっかけとなったもので、功績は非常に大きいことは間違いありませんが、今後は大豆油インキ以降の印刷インキの環境配慮とそのアピールを考えるべき時期にきているといえます。
今回のソイシール停止はそうしたチャンスでしたが、継続が決まったことで低VOC化を目指す流れが後退しなければと願う次第です。
一方で、残念ながら、ノンVOCインキについては、定義・名称・マークなどインキメーカーなどによってバラバラで分かりにくく、使いにくいなど、大豆油インキの受け皿となるには不十分なのも間違いありません。こうした点については改めて考えたいと思います。