□ アメリカ大豆協会は今後も引き続きソイシール商標の使用許諾を行います
ただし、単純に喜ぶべきニュースであるか、少し考えてみる必要があるでしょう。
ソイシールの停止は、大豆油が広く普及し、当初の目的を達成したことがその理由の1つでした。実際に、オフセット印刷用インキの実に67%が大豆油インキとなっています。
7割と高く普及・一般化したものを環境アピールとしてプッシュすることが果たして適切なのかどうか、改めて考える必要があるといえます。
さらに、環境面をよくみてみると、大豆油を使うことが直接環境メリットになるわけではありません。石油系溶剤を大豆油などの植物油に置き換えることが、石油系VOCを削減し、印刷の環境負荷を下げることにつながります。
大豆油インキは一定以上の大豆油を含んだインキですが、石油系溶剤も使われています(オフセット枚葉インキでは20〜30%程)。現在では、石油系溶剤を1%未満にした「ノンVOCインキ」と呼ばれるインキが開発され、利用が広がりつつあります。
例えば、エコ印刷研究会の調査では、環境報告書・CSRレポートのノンVOCインキ採用率は26%となっています。
つまり、環境面、VOCの削減効果をみると、環境配慮型インキのトップランナーは、大豆油インキからノンVOCインキにバトンタッチされようとしている状況といえます。
※大豆油インキであり、ノンVOCインキでもあるインキ(規定以上の大豆油を含み、また石油系VOC成分を1%未満にしたインキ)も存在します。
大豆油インキとそのマーク(ソイシール)は、インキの環境配慮について考えるきっかけとなったもので、功績は非常に大きいことは間違いありませんが、今後は大豆油インキ以降の印刷インキの環境配慮とそのアピールを考えるべき時期にきているといえます。
今回のソイシール停止はそうしたチャンスでしたが、継続が決まったことで低VOC化を目指す流れが後退しなければと願う次第です。
一方で、残念ながら、ノンVOCインキについては、定義・名称・マークなどインキメーカーなどによってバラバラで分かりにくく、使いにくいなど、大豆油インキの受け皿となるには不十分なのも間違いありません。こうした点については改めて考えたいと思います。