2007年07月24日

大豆油インキの今後

以前、大豆油インキマークが使えなくなる見込みであるとお伝えしましたが、先日、アメリカ大豆協会では、多くの継続要望があったことから、商標権存続期間を延長し、引き続きソイシールの使用許諾を行うと発表しました。これによって2011年以降も大豆油インキマークが使用できる見込みです。

アメリカ大豆協会は今後も引き続きソイシール商標の使用許諾を行います

ただし、単純に喜ぶべきニュースであるか、少し考えてみる必要があるでしょう。

ソイシールの停止は、大豆油が広く普及し、当初の目的を達成したことがその理由の1つでした。実際に、オフセット印刷用インキの実に67%が大豆油インキとなっています。
7割と高く普及・一般化したものを環境アピールとしてプッシュすることが果たして適切なのかどうか、改めて考える必要があるといえます。

さらに、環境面をよくみてみると、大豆油を使うことが直接環境メリットになるわけではありません。石油系溶剤を大豆油などの植物油に置き換えることが、石油系VOCを削減し、印刷の環境負荷を下げることにつながります。

大豆油インキは一定以上の大豆油を含んだインキですが、石油系溶剤も使われています(オフセット枚葉インキでは20〜30%程)。現在では、石油系溶剤を1%未満にした「ノンVOCインキ」と呼ばれるインキが開発され、利用が広がりつつあります。
例えば、エコ印刷研究会の調査では、環境報告書・CSRレポートのノンVOCインキ採用率は26%となっています。

つまり、環境面、VOCの削減効果をみると、環境配慮型インキのトップランナーは、大豆油インキからノンVOCインキにバトンタッチされようとしている状況といえます。

※大豆油インキであり、ノンVOCインキでもあるインキ(規定以上の大豆油を含み、また石油系VOC成分を1%未満にしたインキ)も存在します。

大豆油インキとそのマーク(ソイシール)は、インキの環境配慮について考えるきっかけとなったもので、功績は非常に大きいことは間違いありませんが、今後は大豆油インキ以降の印刷インキの環境配慮とそのアピールを考えるべき時期にきているといえます。

今回のソイシール停止はそうしたチャンスでしたが、継続が決まったことで低VOC化を目指す流れが後退しなければと願う次第です。

一方で、残念ながら、ノンVOCインキについては、定義・名称・マークなどインキメーカーなどによってバラバラで分かりにくく、使いにくいなど、大豆油インキの受け皿となるには不十分なのも間違いありません。こうした点については改めて考えたいと思います。
posted by eco-ken at 16:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 印刷インキ

2007年07月04日

環境報告ガイドライン改定

環境省は「環境報告書ガイドライン(2003年度版)」を改定し、「環境報告ガイドライン〜持続可能な社会をめざして〜(2007年版)」としてまとめました。
「環境に配慮した投融資の状況」や「生物多様性の保全と生物資源の持続可能な利用の状況」などが加わりました。

あまり注目されていませんが、エコ印刷という視点では次の点が重要なポイントとなります。
環境コミュニケーションの状況について記載することが期待される情報・指標として、「広告・宣伝の方法や媒体等に関する環境配慮の状況」が上げられ、「委託先に外注している印刷物等(広告宣伝物を含む)も含めて記載することが期待されます」としています。

企業活動で使用する印刷物は、広告宣伝物などの占める割合が多いものの、実際には業務委託先(広告代理店など)で制作・配布され、製品のパッケージ・説明書などとは異なり、自社内への出入りがなく、環境報告の対象に含まない企業がほとんどでした。
企業に高い社会的責任が求められる中、こうした取り組みの拡大は重要になってくると考えられます。

「環境報告ガイドライン〜持続可能な社会をめざして〜(2007年版)」の策定について
posted by eco-ken at 16:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 基準・ガイドライン